法律Q&A Question&Answer | 弁護士法人 おおたか総合法律事務所 (OTAKA Law Office)

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【医療訴訟】猥褻事件(2)私は外科医ですが、胸部手術を行った患者から猥褻行為をしたと訴えられ逮捕されました。身に覚えはありません。今後どうなりどうしたらいいでしょうか。

2016. 08. 28

【Q. 質問】

(2)私は外科医をしておりますが、胸部の手術を行った患者が麻酔から覚醒中に診察をしたところ、猥褻な行為をしたとして訴えられ、逮捕されてしまいました。警察官は、被害者の女性から採取したサンプルから私のDNAが検出されたと言っていますが、身に覚えはありません。今後どうなるでしょうか、またどうしたらいいのでしょうか。


今回のQ&Aは、「診察装い、女性患者にわいせつ行為の疑い 外科医の40歳男逮捕( http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00334368.html )」と、医師の猥褻事件として大々的に報道された後、病院側から「警視庁による当院非常勤医師逮捕の不当性について抗議する( http://yanagihara.kenwa.or.jp/statement.html )」という抗議文が出され( http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00334368.html )、報道や当事者の言い分からは真偽不明となって話題を呼んでいる事件について、(1)猥褻行為をされたとする患者側。(2)猥褻行為をしたとされる医師側双方からの質問に答えるQ&A形式で解説させていただきます。


【A. 回答】
(2)身に覚えのないことで逮捕されたとの事、大変ショックで、驚きと憤りで一杯のことと存じます。(準)強制猥褻の法定刑は6月以上10年以下なので、警察官から弁護人を選任できることを告げられた際に希望すれば当番弁護士(弁護士会により割り当てられる弁護士)が接見に行きます。その弁護士を選任するか、若しくはご自分で希望する弁護士を呼んで(こちらも警察官に「〇〇事務所の△△弁護士に、□□が接見を希望していると伝えてくれ。」と言えば伝えてくれます。また、関係者がその弁護士に依頼し、その弁護士から接見に行くことも可能です。)選任するかして下さい(弁護士を選任しないことも可能ですが、弁護士しかできないことが多々ありますので、得策ではありません。)。
 選任された弁護士は、逃亡の恐れや証拠隠滅の恐れがないこと等を根拠に逮捕拘留に対する異議である準抗告を裁判所に申し入れることができ、実際これが認められることもありますが、容疑となっている事案ですと、たとえ実際は無実であっても、口裏合わせの恐れありとされ、認められない可能性が高いと思います。
 そうなると、最低限23日間の勾留は覚悟すべきです(制度上は13日間で終わることもありえますが、まずありません。)。その間、被疑者として取り調べられることになりますが、まず記憶が新しいうちに事実関係を時系列で書きだすなどして確認してください。その上で、自分のやった事はやった、やっていない事はやっていないと、正確に述べてください。逮捕している以上警察(検察)は被害を訴えている方の証言や物的証拠(今回はDNA)を持っています。その証言や証拠と、被疑者の供述が一致するかしないかが、検察が起訴をするかしないかを決定する決め手となります。無実であれば、被害者を訴えている方の証言や、検察の保持している物的証拠と、ご自身の供述に合理的に説明できない乖離が生じ、検察が起訴を断念する(不起訴)こととなります。
 今回は警察が被害を訴えている方から被疑者のDNAが検出されたと発表していますが、取り調べに当たる検察も、咳やくしゃみによる唾液の飛散や、通常の診察で触った際に偶然付着した微量のDNAをPCRが増幅して検出している可能性があることは把握しているものと思われ、その可能性がある場面について様々な質問をしてくると思います。また、麻酔の覚醒中であることから、被害を訴えている方の証言が必ずしも真実かどうかわからないことも把握しており、診察の状況について様々な質問がなされると思います。これらの部分が適切に説明され、かつ他の関係者の証言と整合性が確認されれば不起訴となる可能性も多々あると思いますので、繰り返し正確な供述に努めてください。
 尚この間、被害を訴えている方との示談は難しい選択になります。無実である以上、示談の必要性はないですし、示談を申し入れる以上何らかの行為をしたことを認めることになるからです。一方で、もし猥褻な行為はないが、不注意で誤解されかねない行為があったとの認識があれば、弁護士を介してその旨を伝え、理解を得て示談し、告訴を取り下げてもらうことも考慮すべきです。告訴が取り下げられれば、起訴はされず、前科もつきません。
 それでもなお、嫌疑が晴れない場合、起訴されることとなりますが、そうなったら、弁護士とともに、長期戦の覚悟を決めて、徹底的に無罪の立証を行うこととなります。鍵となるのは、麻酔から覚醒中の患者の証言の信用性と、PCRによるDNA検出の証明力です。麻酔から覚醒中の患者の証言の信用性については、単に一般論ではなく、その当時の患者の状態をカルテ等から具体的に特定したうえで、医学文献を引いての主張や専門医の意見書の作成が必要になると思われます。PCRによるDNA検出の証明力については、被疑者のDNAが混入する可能性がある場面や状況を具体的に特定するとともに、実際に実験を行ってそれが起こりうることを示し、更にそのような状況が医療現場で起こりうることについての意見書等を専門医から作成してもらう必要があると思われます。これらの立証活動には、医学知識を有する協力者か弁護士が不可欠であると思われます。


【解説】この事件は、「診察装い、女性患者にわいせつ行為の疑い 外科医の40歳男逮捕( http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00334368.html )」と、医師の猥褻事件として大々的に報道された後、病院側から「警視庁による当院非常勤医師逮捕の不当性について抗議する( http://yanagihara.kenwa.or.jp/statement.html )」という抗議文が出され、実際に被害・犯罪があったのか、報道や当事者の言い分からは真偽不明となって話題を呼んでいます。
 その為、双方からの質問に答える形でのQ&Aとしました(被害者側の質問への回答は(1)をご覧ください。)が、双方への回答で示した通り、鍵となるのは、被害者側、加害者側双方の証言、供述と、関係者の証言や物的証拠との整合性ということになります。警察は、被害者の証言と被害者から加害者のDNAが検出されたことを大きな根拠としているものと思われますが、病院側の抗議文にある通り、麻酔覚醒中の被害者の証言は必ずしも信用できるものとは言えませんし(とはいえ全く信用できないともいえません。)、PCRによるDNAの検出は、あまりに増幅力が高いために、通常の診療の過程で偶然付着した微量のDNAを増幅して検出している可能性を否定できません。事実は一つのはずですが、後からそれを証明するとなると、様々な可能性や疑いを考慮したうえでそれを排除していかなければならないことを端的に示す事案であり、真実解明のための、捜査機関と弁護側双方の真摯な努力が求められるものと思います。